坂道では自転車を降りて
「心配して、ジューズ買って来てくれた。」
「要らないって言われたな。今は?なんか買ってこようか?」
「今、飲んで来たばっかりじゃん。」
「そうでした。」
「今日も水にしとけばよかった。あうー。」
彼女はお腹を押さえて、脚をバタバタさせた。
「もしかして、今日も恒例行事なの?」
「。。うん。」
「そうか。大変だな。」
それで、電車で帰るって言ったのか。
「私、緊張したりすると、突然くるんだよね。旅行とかいつもお腹痛くなっちゃって、すごい不便。公演で来た事はなかったんだけど。今回は、やっぱ引き戸かな。」
「頑張ったもんな。」
手を彼女の膝においてさする。
「無事終わってよかったね。途中で動かなくならないか、最初ハラハラしてたけど、みんな本当に楽しそうにやってるから、途中から忘れてた。神井くんもすごく楽しそうというか、生き生きしてた。楽しかった?」
「うん。すごく楽しかった。本当に、みんなに感謝だな。」
「もう、大丈夫。行こう。」
「大丈夫?」
「うん。貧血は収まった。腹痛は、」
「どうせ治らないって、前も言ってたな。」
あの日は鞄をもってあげることも出来なかった。今日は鞄だって持ってやれるし、手を繋いでもやれる。肩を貸してやってもいい。彼女の為に何か出来るのが本当に嬉しい。僕らはバスの中でもずっと手を繋いでいた。同じバス停で降りて、家までの道をやっぱり手を繋いで歩く。