坂道では自転車を降りて
土曜は予報通りの快晴。朝大船駅で待ち合わせた。彼女は北村さんと一緒に現れた。
「今の時期は花と新緑が綺麗だから」といいながら、俺達は織田に連れられて植物園に入った。
 北村さんは重たそうなカメラを首から掛けながら、軽快なジーンズ姿に派手な色柄のシャツ、腕には腕輪をじゃらじゃらはめていて、絵に描いたような女性カメラマンの出で立ちだったのに比べ、彼女は普通にオフホワイトのオーバーブラウスにジーンズ、皮のフラットシューズ、アクセサリはなし。でも、いつもはただの茶色いゴムで束ねている髪を、やっぱり茶色の皮の髪留めで止めていた。地味と言えば地味だけど、スレンダーで、姿勢が良くて、明るい色の髪の彼女は、スッキリとした印象で、花は無いけど、やぼったいというほどではない。もうちょっとだけ花があったら、きっと眩しいくらい可愛くなるだろう。

「ねぇ、髪は降ろしておいてよ。髪留めの痕がついちゃうじゃない。スカーフとかあったらいろいろアレンジできるのに。せめてペンダントとかさ。」
北村さんは彼女の髪やら服にいろいろ注文をつけていた。

「普通の写真なら午前の光が失敗少ないです。強すぎなくて明るくて。くっきり撮れる。まず撮りたいものとって見ましょうか。その前に、カメラの設定しましょう。」

 彼女達のカメラには、撮った写真をその場でタブレット端末に転送できる機能がついていた。写真部員達が設定するのを、彼女は熱心に見ていた。
 彼女のカメラは織田や北村さんのカメラに比べて一回り小さかった。女性用なのかな?見ていると、彼女はいきなり俺を撮り始めた。
「おい、いきなりかよ。」
「いや、誰でも良いんだけど、そこにいたから。」
気付くと北村さんも俺を撮っている。逃げ回る訳にも行かず、つったっていると、
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