坂道では自転車を降りて

「あれ、北村さんも人物を撮りたいんですか?」
織田が尋ねる。
「そう。本当はイケメンを撮りたいんだけど、今日はいないから神井くんで我慢するよ。」
 織田は困っている俺を見て笑った。写真部員は織田の他に男が2人現れた。今西という2年は、会ってみたらイケメンでも何でもない、ただのカメラオタクだった。女性を褒めるのが上手いどころか、まったく話せない様子で、要するに、織田のおこぼれに預かりに来たらしい。タブレットに転送される彼女達の撮った写真を見ていた。織田もそれに加わる。

「ちょっと見てみましょうか?」
織田が言うので、みんなタブレットの前に集まる。
「2人とも、どんな写真が撮りたいのか、全然わかりませんね。北村さんはどんな写真が撮りたいんですか?」
「うーん。よくわかんない。イケメンを格好良く。可愛い女の子をより可憐に。ジョーを撮らせてくれるんでしょ?」
北村さんは彼女の写真を撮りたいらしい。ちょっとレズっ気があるよな。
「大野先輩は?」
「本当は躍動感のあるやつが撮りたいんだけど。」
「Numberみたいなやつ?」
「そう。」
「そりゃ、無理ってもんですよ。あの人達はあれで食べてるんだから。機材もスキルも違いすぎる。」
「だよね。。」
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