坂道では自転車を降りて

「じゃあ今日は、まずは神井先輩を、格好良く撮ってみましょうか?」
「わかった。」
「神井先輩、そこ立っててください。」
「立つのは良いけど、恥ずかしすぎて、どんな顔してたらいいか分からないよ。」
「今は単に立っててくれたらそれで良いです。」
「まずは光源に気をつけて、、」
織田のレクチャーが始まった。
彼等は、単に突っ立っている俺を見ながら左右に動き回る。俺は織田に言われた方を向いたり、上を見たり下をみたりさせられながら、説明を聞く。光源の強さや方向が大事らしい。
「あと、構図なんですけど、。。。。。」
今度はカメラを一緒に覗き込みながらいろいろ説明している。
「それから。。。」
織田が俺の横にしゃがみ込んでカメラを構える。
「先輩ここに来て、のぞいてみて。」
「あ、なんか、カッコいい。」
「でしょ?」
一応ずっと前を向いていたんだけど、視線を動かすなとは言われていなかったので、彼女を見てみた。
「うわ。」
彼女は赤くなって写真を何枚か撮ると、立ち上がった。
「なんか、ドキドキした。」
「どれどれ。」
北村さんも同じ位置にしゃがむ。恥ずかしくなって目を逸らす。
「あー、なるほどね。」
「人物はこうやって、目線を上下に動かすと、印象が変わるでしょ?」

 その後、モデルは林という写真部員と交代し、俺も自分のカメラを構えた。背景を変えたり、手前に木を配置したりと、いろんな構図で写真を撮り、その度に林は立ったり座ったり、目線をこちらへ向けたり、いろんな構図で写真を撮った。練習といえばそうなんだが、どうも野郎をとっても俺は面白くない。今西は林を撮らずにカメラを構える彼女達や植物の写真を撮っていたので、俺もそれに準じる事にした。
 織田のレクチャーは小一時間かかったが、女性達は大満足のようだった。

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