坂道では自転車を降りて

「先輩、カメラの原理はほぼ理解されてますね。あとは、誰かの撮った良い写真があったら、どうやって撮ったのかよく考えて、沢山撮ると良いって聞きます。でも、写真は技術だけじゃないから。。僕は風景が多いので、実際には人物や動くものはあまり撮った事がないんです。人物なら、織田が得意です。」
「そうだったね。後で織田くんにも聞いてみようっと。」

売店での簡単な昼食を終えると、俺達は温室に入った。
「次は大野先輩を撮りますから、先輩、鞄とカメラ、外してくださいよ。」
「はぁい。」
彼女はカメラと鞄をベンチに置いた。
「そうだ。私のカメラ、神井くん使ったら?」
「そうだな。貸してもらおう。」
「俺もモデルを頼んで撮るのは初めてだから、実はよく分からないんですけど。大野先輩は美術部でもモデルやってるし、舞台にも立ったし、先輩が思ったようにやってみてくださいよ。」
織田が言う。そっか。織田も慣れてる訳じゃないんだ。

「うーん。なんか、同じモデルでも絵と写真は全然違うような気がして来た。」
 言いながらも、彼女は周囲を見渡して少し移動すると立ち止まり、植物の看板を眺めながら、しばらく静止した。織田はクルクルと歩き回りながら構図を考えているようだった。今西や林、そして北村さんも後に続く。
 俺はどうしていいか分からず、おいてけぼりを食ったような気分になったが、とりあえずカメラを構えてみたら、
「うわ、神井くん。そりゃダメだわ。」
北村さんにダメだしされてしまった。

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