坂道では自転車を降りて

「神井先輩、大野先輩の隣に座って、これ口に入れてあげて。」
「はぁ?」
「はやく、神井先輩は撮りませんから。」
「なんで、、そんな恥ずかしい事。できるわけないだろ。」
「だったら、今西に頼みますけど、良いんですか?」
「。。。。ちっ。」

 俺は舌打ちをして、ぷいと横を向いた彼女の視線の方へ回り込んで、隣に座った。彼女は俺の顔を見ると、少しホッとした表情を見せて笑った。箱からチョコを出して口に入れてやろうとすると、手で受け取って自分で口にいれた。それから、恥ずかしそうに下を向いた。どっちにしても、ものすごく恥ずかしい写真を撮られたと思う。
 俺はその場で、さっき彼女が読んでいた絵本を読ませてもらった。彼女が横から覗き込む。織田も策士だな。こんな本持って来て読ませるなんて。

「先輩方、ありがとうございました。」
「もうやらないよ。」
明らかに抗議の声色で彼女は言った。
「俺もだ。」
「ええ、分かりました。今日撮れた写真はいつ見ます?それとも見なくて良いですか?」
織田は全然気にする風もない。
「私は、別に見なくていい。」
「あ、俺は見たい。」
俺が言うと、多恵がムッとした顔をした。その日は結局そのまま解散となり、写真は後日、コピーしてもらう事になった。

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