坂道では自転車を降りて

 察するに、最近の君は、織田の撮る写真に目が♡なわけね。そのうち醒めるって川村は言ってたけど。これは結構キツいな。織田と俺の間にはある程度の信頼関係が出来ているから、今日はまだ我慢できた。というか、それほど不安にならずにすんでる。だけど、これが知らない男だったら、俺は冷静でいられるのだろうか。

 俺は彼女の肩を抱き寄せた。頬を掴んでこちらを向かせ口づける。「んっ。」何度も、ねっとりとしたキスを繰り返す。人はもういないけど、まだまだ明るさの残る公園。彼女は戸惑って逃げようとしたけど、俺は逃がさなかった。キツく抱き締めて、耳に舌を差し込むと、彼女は悲鳴を上げた。

「ひゃうっ。。。やっ。。ん。ダメだよ。」
「どうして?」
「どうしてって、明るいし、恥ずかしいよ。」
「日が暮れるまでなんて、待てないよ。」
耳に息を吹きかけながら言う。
「ぁはっ。ゃ。。どうしたの?」
赤い顔で抵抗する。困った顔が可愛い。
「どうもしないよ。君に触りたいだけ。」
抱き締めて首筋に唇を押し付けると、観念したのか抵抗をやめた。

「だって、変だよ。どうしたの?」
「ねぇ。来週でいいから。俺の部屋来て。」
「うん?」
「母さんがいなくても、誰もいなくても、来て。」
「。。。分かった。」
 彼女はこくんと頷いた。今日だったら母さんいたのに。でも、今日はもう夕方だ。俺は彼女の耳を頬を首筋を唇を、犬みたいにべろべろ舐めた。汗の味がする。彼女は顔を背けて逃げるので、宴会でセクハラしてるオヤジみたいな絵になってるだろう。とうとうベンチに倒れてしまった彼女を、組み敷いたまま見下ろして言う。
「多恵、、させてよ。」

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