坂道では自転車を降りて

 多分、彼女だ。自転車で追いかけて来たんだ。でも、なんで?玄関で靴を履きながら電話する。自転車を漕いでたら、電話に気付かないかもしれない。彼女の自宅まで行く可能性を考えて、自転車をひっぱり出す。
 彼女はすぐに電話に出た。
「どうしたの?今どこ?」
「えっと、家?」
うそつけ。家がそんなに騒がしいわけない。さっきまで俺のいたコンビニのCMが聞こえる。
「そこにいて。今行くから。」
「来なくて良いよ。また学校で会えるじゃん。」
「いいから、動くなよ。」
俺は自転車に乗って走り出した。逃げるなよ。

コンビニの前に停めた自転車にもたれて、彼女は立っていた。
「どうして?俺に会いに来たんだよね?」
「ん。まだ早いから、一緒に写真見ようかと思ったの。」
確かに彼女はカメラを持参している。といってももうすぐ6時だ。それほど早くはない。
「一緒にって、、」
どこで?どうやって?公園か?それにこんな小さな液晶画面で見たって。あ、もしかして、

「え?俺の部屋で?」
俺の部屋でパソコンで見るって言うのか。
「うん。パソコンはいつものラップトップだけ?」
「いや、デカいのもあるけど、親父のだから、親父の部屋なんだ。」
「そっか。。」
「今から、ウチに来るの?」
「ダメ?」
「そんな突然言われても。。」
部屋が、、どんな状態だったっけ?

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