坂道では自転車を降りて
「あのね。」
「うん。」
「。。。前言ったよね。あなたになら、何されても良いよ。」
ものすごく小さな声。
「。。ちゃんと解って言ってる?キスじゃないよ?俺、止まらないかもしれないよ。」
「分かってるよ。ちょっとは勉強したから。高校生でも、その、本当にしてる人もいるんだね。私、あんなの小説や漫画の世界かと思ってた。」
「そっか、勉強したのか。」笑。
「うん。」
「。。。。、、本当に、いいの?」
「ただ、私は。。。」
顔を上げて俺を見る。目が合うとまた下を向いた。
「君は?」
「出来ればまだしたくない。知りたくない。ごめん。」
「そっか。」
答えは残念だったけど、分かっていた事だ。曖昧にしないで、はっきりと答えてくれたのが、かえって嬉しかった。
「怖いのもあるし、神井くんのことをちゃんと知って、もっともっと好きになってからにしたいの。そういうことしちゃうと、なんか、、、今でも少しそうなんだけど。。。そっちばっかり気になっちゃうような気がして。」
俯いたまま、俺のシャツの裾を掴んだ。耳が真っ赤だ。
「私、こんなの初めてで、会うたび、すごくドキドキして、嬉しくて、毎日自分が変わって行くのがわかるの。今はまだ、その、先に進むのは怖くて、自分には早いと思ってる。ついこの前まで考えた事も無かったんだもん。でもそのうち、あなたとこうやって過ごしていたら、自然にそうなる日がわりとすぐに来るような気がする。だからそれまで、」
待って欲しいと。彼女は懇願するような表情で上目遣いで俺の顔をチラリと覗いて、また俯いた。俺はちょっと切なくて、情けない顔をしていたかもしれない。