坂道では自転車を降りて
「変な事してない?」
「してないよ。」
なんとなく不機嫌な声がでてしまう。彼女は後ろでクスクスと笑っていた。母は名残惜しそうに部屋を出たので、俺はドアを閉めた。受け取ったお盆をどこかに置きたいが、机上にはパソコンとカメラが陣取っている。仕方ないので床に置いた。
「優しくて楽しそうなお母さんだね。前も言ったかな?」
「そうだったかな。」
「仲も良さそう。」
「悪くはないな。母親に反抗するほど、もう子供じゃないよ。」
床に座って2人で紅茶をすすった。熱い紅茶はなかなか冷めなくて、飲みにくかった。
なんとなく、落ち着かない。それは彼女もおなじみたいで、データ転送の終わったカメラを片付け始めた。
「君の考えは解ったよ。」
俺は彼女の背中に向かって言った。
「うん。」
彼女はそのまま頷いた。
「最終的には、俺が決めて良いんだね。」
「うん。」
「ふむ。」
カメラを片付け終わった彼女は振り向いた。どんな顔をしているのかと思ってたけど、普通の顔だった。
「それと、、もう一つ。」
「なに?」
「私たち、受験生だよね?」
「そうだね。」
「それも、ある。」
「うむ。」