坂道では自転車を降りて

夕飯の時に母に訊かれる。
「来週も来るの?」
「うん。俺が誘った。一緒に勉強しようかと思って。彼女、成績良いし。」
「ふーん。」
「理数系が得意なんだ。教えてもらえる。」
「あっちにメリットは?」
「。。。。多分、いや、もしかしたら、英語や国語は俺の方が。」

 春の公演の脚本を書く時に、予習を頼んだノートは申し分無かった。もしかしたら、俺が教えられる事なんか、何もないかもしれない。
「なんでもいいけど、ちゃんと勉強しなさいね。」
「うん。」
「あれは、私にも家にいて欲しいってことなの?それともいないで欲しいの?」
「いて欲しいんだと思う。」
「ふーん。真面目な子ねぇ。」
「うん。」
「あんた、信用ないのね。」
「ないです。」
「本当に、変な事してないでしょうね?」
「してません。」
したいけど。
「わかった。少なくともお父さんのところに行くのはやめとくわ。交通費もバカにならないしね。」
「。。。。よろしく。」

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