坂道では自転車を降りて

 昼飯は休憩がてらコンビニまで散歩して仕入れようと思っていたのだが、階下に降りると母がチャーハンを作ってくれていた。親切心なのかもしれないけど、母さん、やり過ぎだよ。こんな状況で昼飯食べさせられても、彼女は食べた気がしないだろ。心配になって彼女をチラリと見たら、こっちも何故か素直に喜んでいる。彼女、意外と図太い。
 食堂で母さんと差し向かいで、チャーハンを2人で食べることになってしまった。彼女は旨い旨いと言いながら、もりもり食べてるけど、、ちょっと量が多くないかな。
 母さんは学校での俺について、彼女に根掘り葉掘り聞いてくる。彼女は俺が演劇部でワガママ放題にやらせてもらっていた事や、職員室でも有名人であることを暴露した。悪口スレスレの表現に、ヒヤヒヤする。俺が問題児なのは今さら知られた所でどうでも良いけど、彼女が母さんに嫌われるのは勘弁して欲しい。

「裏方の後輩にも、最初すごく怖がられていました。でも、いつの間にか親しくなってた。みんな最後は神井くんのやりたいことに巻き込まれて行っちゃうんです。神井くん、すごい人です。」
「あんまり褒めると調子に乗るから、そのくらいで良いわ。次男で末っ子だからか、ワガママで強引でしょ?調子に乗ると手が付けられないの。」
「あはは。そうですね。」

「上の子が優しいというか、ぼーっとした子でね。この子は要領がいいから、良いものを先にとっちゃって、絶対に譲らないから、小さい頃はケンカばかりで。そのうち上の子がすぐ諦めるようになっちゃって。ホント可哀想なのよ。」
「でも、お兄さん優しいんですね。」
「そうなのよ。それを良い事に、この子はもうホントやりたい放題で。いつだったかねぇ、、」
母が俺の黒い歴史を披露しそうになったので、俺はあわてて、話題を変えた。
< 608 / 874 >

この作品をシェア

pagetop