坂道では自転車を降りて

「多恵、君はどうしてすぐ嘘つくの?本当なら俺の顔見て言いなよ。」
俺も立ち止まって後ろを向き、視線を合わせると、見る間に彼女の瞳の中に涙がうわーっと溜まって溢れ出した。
「神井くんが好き。嘘じゃない。」
泣きながら言うと俯いた。そんなこと聞いてないだろ。何があったか聞いてるだけだ。どうして隠す。泣きながら好きって言えば、何をしても許されるのか?

「それは分かってるよ。そうじゃなくて、昨日、何があったのか聞いてるだけだよ。本当の事を教えてよ。」
俺は内心苛立っていたけど、できるだけ優しく言った。
「怒らないから。」
「何も、ない。よ。本当だよ。」
彼女は既に激しい嗚咽を抑えるのに必死で、マトモな返事は出来そうもない。
「だって、変だよ。」
「でも。。。。」
いつまで経っても、それ以上の言葉は出てこなかった。
「泣くなよ。ずるいだろ。」
舌打ちとため息、やるせない仕草で彼女から視線を外した。まただ。まるで俺が苛めてるみたいじゃないか。いつもそうだ。
「もういい。帰ろう。」
「。。。ごめ、、な、さい。」
結局、彼女は自宅に着くまで泣いていて、何も言葉を交わせずに帰って行った。また泣かせてしまった。だけど、これって俺のせいなのか?


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