坂道では自転車を降りて

 次の日、図書室へ行かれなかった。どうして脚が向かなかったかといえば、何かを隠してる彼女に腹をたてていたから。放課後はもっと憂鬱で、怒りと恋しさがない交ぜになって、胸が苦しかった。会いたいけど、会ったらきっとまた問いつめてしまう。そしてまた彼女が泣くんだろうなと思うと、今度は怖くなって、友達との流れに乗ってそのまま家に帰った。

 思えば、図書室へ行かなかったのはマズかった。次の日はさらに行きづらくなり、どうしていいか分からなくなった。放課後も男友達と過ごしてしまった。通学路も違う、クラスも離れている俺達は、偶然すれ違うこともなく、一度も顔を見ることなく週末になってしまった。

 今ならまだ、間に合う。あの日の事は忘れて、いつもどおりに会って、いつも通りに過ごしていれば、きっと時間が俺達を元通りにしてくれる。多分。そう思いながら、結局、電話さえ出来ず、ずるずると週末が終わった。

 週が空けて月曜は彼女の予備校。火曜は俺だけ6時間。そうこうしている間に学校では期末考査が始まり、なんやかやでさらに1週間がすぎた。週に一度、顔を見る約束を破ったのは、俺の意思か、それとも彼女の意思なのか。

 期末考査の終わった週末、俺は自室で1人勉強していた。本当だったら、この週末くらいは彼女とデートしたり、部屋に呼んで、答え合わせとか、勉強とかしながら、イチャイチャしようと思っていたのに。
 夜、携帯が鳴った。織田だ。多恵がその後どうしているか気になって俺にかけてきたらしい。

「もう多恵に関わるなっていったろ。」
「すみません。でも気になって。大野先輩、大丈夫ですか?」
「。。。。。。」
「ちょっと黙らないでくださいよ。大丈夫なんですよね?」
「大丈夫だよ。教室では普通にしてると思う。」
「教室ではって。」
「。。。。。。。」
「教室以外では、どうなんですか?」
「。。。。全然、大丈夫じゃねぇよ。お前、彼女に何したの?」

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