坂道では自転車を降りて
 結局、鞄は置いて帰る事になってしまった。下駄箱で川村に追いついた。駐輪所までならんで歩く、携帯を覗きながら川村が言った。
「神井ぃー。先輩からメール。」
「あ?」
「今日のこと、誰にも言うなって、とくに大野さんに。あと、鞄は、悪かったって。」
鞄は、もうどうでもいいや。

「大野さん、どうするんだろう。」
川村が言う。
「どうもしないだろ。」
俺には関係ない。はずだ。
「部を辞めたりとか、ないよな?」
「辞めるのは先輩だろ。」
「そうだな。」

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