坂道では自転車を降りて

「今西って、お前が植物園に連れて来たヤツだな。この前、多恵を呼び出した。」
「はい。」
「で、そいつとお前と多恵で、何をしてたの?」
「それは、べつに何というほどのことでは。」
「だったら言えよ。なんなの。」
「でも、大野先輩が言わないでくれって。俺だって言いたくないし。」
こいつは何の為に俺に電話して来たんだ?言えないなら、電話するなよ。
「多恵に聞けってこと?」
「いいえっ。それは絶対ダメです。大野先輩には聞いたらダメです。絶対。無理に聞いたりしないでくださいよ。」
「意味わかんねぇよ。お前は言わない。多恵にも聞くな。だったらお前なんで電話して来たの?」

「それは、、、大野先輩が心配だったから。頼みます。本当に。」
「無茶言うな。だったらお前が話せよ。だって、そうだろ?お前らは多恵がどうして泣いたのか知ってるのに、なんで、俺が知らないの?それに俺には知られたくないって、後ろめたいからだろ?俺に隠れてコソコソと。それを隠したままで優しくしてくれって、虫が良過ぎない?」
「大野先輩、泣きました?」
「泣いたよ。わんわん。でも、あいつはすぐ泣くんだよ。」
「よかった。」
「よかった?なんで?」
「俺の前では泣かなかったから。」
「。。。。意味が分からん。」
「神井先輩。大野先輩の事、本当に頼みます。でないと俺、申し訳なくて。」
「だったら言えよ。何があった。」
「それは無理です。それに電話じゃ、ちょっと、」
「だったら明日だ。放課後、部室に行く。」
「。。。。」
「いいな。お前も来いよ。」
「。。。でも、」
「でもも、なにもあるか。絶対来い。」

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