坂道では自転車を降りて
俺たちは自転車を押して歩きながら話した。自販機を見つけたので水を買って飲んだ。
「先輩、なんであそこで止めたのかな。あのまま、自分のものにしちゃえばよかったのに。」
「そうか?無理矢理なんて、あり得ないだろ。」
「無理矢理なんかじゃねぇよ。お前は先輩と大野さんのことよく知らないから。あれ、キスしたって、大野さん絶対怒らないし、後悔もしないと思うぜ。」
「それはどうかな。泣いてたじゃないか。」
「泣いたのは嫌だからじゃなくて、怒られたからだろ。先輩がどんだけ大野さん大事にしてたか、お前知らんだろ。。」
「だからだろ、今だって、大事にしたかったんじゃないか。」
「そうだけど。。それにしても、ヘタクソすぎる。いつもはもっと慎重で優しくて、泣かせたりなんか、絶対しないのに。今日の先輩、変だった。何考えてたんだろう。」
川村は何か不満そうだ。

「結局キスしてないのかな?」
「してないんじゃないかな。するつもりなら最初にしてるだろうし。あんな流れで我を忘れてやっちゃう人じゃない。まるでわざと泣かせたみたいな。」
「確かに。」

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