坂道では自転車を降りて
「なんか、憂うつで。。電車を降りられなかったの。なんとなく海が見たくなって、ぼーっと乗ってたら、平塚過ぎて、小田原の向こうまで行っちゃった。」
「どこまで行ったの?」
「真鶴で降りた。駅から海が近そうだったから。あまり考えずに降りちゃって。帰りの電車賃がギリギリだったよ。」
「真鶴ってどのへん?もしかして静岡県?電話した時そこにいたの?」
「うん。真鶴は多分まだ神奈川県だと思う。」
「電話では学校へ来るって、一緒に帰れるって言ったよね。」
「そうだね。海を見てたら、戻ろうって思ったの。ひとりで見ててもつまらなかったから。傍にいてって、言ってくれたでしょ?」
「そうだよ。言ったよ。今でもそう思ってるよ。」
でも君は突然約束を翻した。俺は彼女の答えを待った。答えに困ったのか、少し間があいて、彼女は話題を変えて来た。
「海、すごい暑かったから、泳いじゃった。」
「。。水着もってたの?」
「ううん。誰もいなかったから裸で。」
「えっマジ?」
「うふふ。」
海で泳ぐ彼女の裸体が脳裏に浮かんで、クラクラした。
「嘘だろ?」
「うん。泳ぎたかったけど、岩場で危なそうだったし、1人はちょっと怖かった。海の水、すごく綺麗だったよ。キラキラ眩しくて。潮溜まりにもイソギンチャクとか、ウミウシとか。」
「へえ。」
いかん。こんな話題ではぐらかされている場合じゃない。それに人気の無い海なんて危ないじゃないか。何やってんだよ。こいつは。