坂道では自転車を降りて
「この時期に成績が上がるヤツがいれば、同じだけ落ちる生徒がいる。ずっと真面目に勉強してきたタイプは上げ幅も小さい。余計な事に気を取られれば、お前みたいなヤツらにあっという間に抜かれて、100位も200位も順位を落とす。それで挫折して、肝心な時に勉強に集中できなくなって転落して行く生徒を何人も見て来た。お前のせいばかりじゃないとは思うが、もう少し、気遣ってやれないか?」
彼女はもともとあまり勉強してないから、先生の言う上げ幅の少ないタイプではない。だが、現に成績は落ちている。余計な事に気をとられているということか。やっぱり俺のせいかな。俺のせいだろうな。
「すみません。」
「まあ、サボってるのは本人なんだし、お前はお前で自分のことで忙しいだろうから、お前が謝る事じゃないんだが。大野の現状はそういうことなんだ。」
「分かりました。俺も、、ちょっと、気をつけます。」
確かに。これで多恵が受験で落ちまくって、浪人したり、三流大学へ行ったあげくに、俺と別れたりしたら、俺と付き合ったことが彼女の人生の汚点になってしまうことは間違いない。いや、受験にそこまで失敗したら、多分彼女は俺から去ってしまう。それくらいのプライドは彼女にもあるはずだ。