坂道では自転車を降りて

「ちゃんとゴムしてる?」
「あたりまえだろ。」
それはまだだから大丈夫だけど、用意はしてある。一応。
「ま、ほどほどにね。神井くん。」
「。。。。」
神井くんって、、お前も神井くんだろ。茶化しやがって。まあいい。母さんよりはずっとマシだし、何を言われた訳じゃない。
 兄はやっぱり1階の方が涼しいなとか言いながら、リビングのテレビで甲子園の地区予選を見始めた。俺はお茶を手に自室に戻った。

 その後の勉強は、自分でも驚く程に捗ってしまった。ようするにスッキリしたのだ。我ながら現金な身体だ。対して彼女は全然集中できなかった様子だった。ぼーっと惚けて、眠そうにテキストにうつ伏せたり、本棚や窓の外を眺めてばかりいた。もう夕方だ。

「少しは勉強したの?」
「あー。」
 惚けた顔をしていた彼女は俺と目が合うと舌をペロリと出した。覗いてみると、ほとんど進んでいなかった。あまりに勉強しないので、心配になってきた。
「おい、真面目にやれよ。」
「でも、まあ、いつもこんなもんだし。」
「それじゃあ、だめだろ。」
「そうだね。」
 俯いて目を逸らし黙り込む。俺は軽くため息をついた。本当に勉強する気あるのかな。これは本気でまずいかもしれない。

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