坂道では自転車を降りて

「そんなじゃどこも受からないぞ。それにそんなで大学行って意味あるのか?」
「。。。。わかんない。」
 のらりくらりとした会話に苛立ち始めた俺に気付いたのか、彼女は帰り支度を始めた。それ以上何も言う気がしなくて、呆れて彼女を見ていた俺は彼女の手首を見てギクリとした。痣ができてないか?
「多恵、その手首。」
彼女はさりげなく左手を鞄の中へ隠した。
「ちょっと、見せて。」
「なんで?」
俺は彼女の右手を手に取ってみた。良かった。右手はなんともない。
「そっちも見せて。」
「こっちも同じだよ。」
「いいから見せて。」

見てみると、左手首には目立つ程ではないが、痣と擦り傷が出来ていた。
「ごめん。痛い?」
手を握ると彼女は目を逸らし、首を横に振る。少し痛みがあるみたいだった。俺は目眩がした。
「大したことないよ。大丈夫。」
「ごめん。こんなになるなんて、思ってなくて。」
「大丈夫だよ。本当に。」

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