坂道では自転車を降りて
 川村はくっくっと笑い出した。からかわれている。
「さぁ。確かに男前だけど、レズかどうかは知らないな。」
「さあって、大野さんの貞操の危機だぞ。」
「それはそれで、世界が広がるねぇ。」
「バカ言うなよ。」
だめだ、川村は当てにならない。清水先輩に訊いてみる。

「大野さん家ってどこなんですか?」
「笠北よ。」
ほっとする。俺の家の近所だ。一緒に帰る口実ができた。
「おれ、笠谷です。一緒に帰りましょう。」
「えっ。。でも、いつ起きるかわからないわよ。」
「いや、あまり遅くてもお店の人にも悪いし、部員がはけたら起こして、一緒に帰りましょう。」
「そんな無理矢理起こしたらかわいそうよ。」

 なんか、清水先輩も変だぞ。酒飲ませたの、まさかこの人じゃないだろうな。
「なぁ、川村。」
川村は成り行きを見ながら、まだ笑っていたが、
「俺も、神井に賛成。」
と同意してくれた。なんとか説得できるだろうか。

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