坂道では自転車を降りて
北村さんからの電話
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 彼女が俺の部屋に通い始めて数日経った頃だっただろうか、北村さんから電話があった。

「また、多恵とよりが戻っちゃったんだって?」
露骨に残念そうな言い方をされる。
「おかげさまでね。」
「何がおかげさまよ。多恵はマゾじゃないのよ。」
どういう意味だよ。いきなり何を言いだすのやら。
「あんたみたいなサディストに振り回されたら、多恵の人生メチャクチャになる。もう多恵に付き纏わないで。別れて。今すぐ!」
「何を怒ってるんだよ?俺はべつに彼女にひどいことなんかしてないぞ。」
ちょっとだけ変態的なことをしたのは認めるけど。

「女にだって、セイヨクはあるの。」
「は?」今、セイヨクって、性欲か?
「あんたの都合で、やりたいだけやって、自分だけ満足したら帰れって。それがどんだけ身勝手な事なのか、わからないの?」
「なんの話だよ。」
「多恵はあんたに会うまでキスも知らなかったのよ。女は結婚まで貞操を守って、セックスは子供を儲けるための行為だと、今でも思ってるの。教科書通りの事しか知らないの。オ○○ーだって知らないのよ。」
女の子が、男に向かって、なんつー単語を。北村さんどうしたんだ?

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