坂道では自転車を降りて
「どんな風に触ったのか、どんな感触だったのか、できるだけ具体的にお願いできますか?」
「ぐっ。具体的にって、そんなの、」
言えるわけないじゃんか。俺が困っていると、坂上の背後に松本さんが立つのが見えた。顔がすげー怖い。。
「そのとき、大野さんはどのようなご様子でしたか?」
「おい、坂上。」
「これもできるだけ具体的にお願いします。」
坂上の背後で浮き輪を手にした松本さんと長野さんが、せーので坂上を掴まえた。そして、そのままプールに頭から突き落とした。浮き輪で両手を拘束された坂上は、頭を上げる事ができず、尻だけプールに浮かんで溺れそうになっている。
「坂上!」これはまずい。かなり危険だ。誰か助けに、と思っていると、俺も誰かに背中を蹴られ、プールに向かって吹っ飛んだ。もしかして飛び蹴り?!
その後、男子は全員、女子等に浮き輪で叩かれたり飛び蹴りされたりして、プールに突き落とされた。
ピピーッと警告笛が鳴り、プール監視員がこちらに走ってくるのが見えた。
監視員に説教をくらい、頭を垂れていると、大野多恵と杉浦さんが、かき氷を手に現れた。
「どうしたの?なんかあったの?」
あれ、彼女達は今までいなかったのか。
「いや、ちょっとふざけすぎまして、監視員に注意されたでござる。」
田崎が言い繕う。
「男子がまたバカやってたの。」
松本さんが意味有りげに俺を一瞥する。危険な行為をしていたのは女子の方だが、ここは黙っているほかは無い。