坂道では自転車を降りて
ひとしきり遊んでまったりとしていると、となりにいた田崎がコソコソ話しかけてきた。
「なあな、大野さんのあれ、結局、脱がないのかな。」
「脱がないんじゃないか。多分。」
「そうか。残念。」
田崎の言葉を聞いて、俺は脱がないで欲しいと思い始めた。俺は見たいけど、こいつらには見せたくないな。ちっぱい疑惑は俺も不本意だが、本当の事は俺だけが知っていれば良いのだ。
2時を過ぎた頃、天気雨がぱらついた。すぐに止んだが、日が翳って少し寒くなって来た。盆も過ぎた。もうすぐ夏が終わる。とたんにプールが空き始めた。
「おい。競泳しよう。」
田崎が言い出した。
「俺と?なんで?」
「お前が負けたら、大野さんがあれを脱ぐ。」
「俺が勝ったら?」
「俺が水着を脱ぐ。」
「犯罪だ。バカ。」
「いいからやろうぜ。」
俺の返事を待たずに、田崎はスタート台に向かって歩き出した。やる事もなくなって、少しダレてきた感があり、競泳も悪くないと思った。
「負けても何もしないからな。」
念を押してあとに続く。田崎と神井が競争するってよ。ひそひそと話が伝わり、仲間がみんな俺達に注目し始めた。