坂道では自転車を降りて

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 本当に眠ってしまったのか。彼女は目を開けない。このまま寝かせてやろうか。何時までに帰れば良いんだろう。外はまだ薄明るいけど、今何時なんだろう。
 自分ではかなりセーブしたつもりだったけど、やっぱり苛めすぎてしまった。彼女は泣きながら悶え喘ぎ続け、疲れ果てて眠ってしまった。気を失ったといった方が近いかもしれない。どのくらいの時間が経ったのか見当もつかなかった。彼女はどのくらいの間、泣き叫んでいたんだろう。セックスしないという約束は守ったけど、それよりひどい事をしてしまったような気がする。っていうか、挿入してないから妊娠の心配がないってだけだ。処女膜も残ってるだろうけど、これじゃあ、もう処女って言わないよな。

 俺はベッドに横たわった彼女の隣に並んで横になり、天井を見上げる。彼女は眠ってしまった。天井を向いたままの俺のこれはどうしよう。彼女の可愛い寝顔を見ていたら、切なくて我慢できなくなり、俺は彼女の手を握った。眠っている彼女の頭に口づけながら、彼女の手を俺のそこへ導き握らせた。いつもはひんやりと冷たい手が、今は火照って熱を帯びている。柔らかく力の抜けたその手の感触を確かめながら動かし始めると、おもむろに彼女の手に力が戻り、瞼が開いた。手が逃げていく。

「お願い。君の手でさせて。」
びっくりして俺を見ている彼女の手を掴み言うと、彼女の顔にまた怯えるような表情が見えた。
「俺のに触って。」
 彼女は沈痛な面持ちで少しの間考えていたけど、黙って頷き俺の胸に顔を埋めた。それから俺のそこにおそるおそる手を触れて、またすぐひっこめた。

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