坂道では自転車を降りて

「これ、見た事あった?」
俺のは少し柔らかくなったけど、まだ大きかった。
「あー、小さい頃には、お父さんとか弟のを、見たことあるけど、こんなじゃなかったような。。」
まあ、当たり前だな。
「俺のも、そのうち小さくなって下向くけどね。」
「ふーん。」
赤い顔で目を逸らした。俺もまだちょっと恥ずかしい。
「ありがとう。すっげー嬉しい。」
俺は彼女をぎゅっと抱き締めて頬に口づけた。

 そのまま2人はお互いの吐息を感じる距離で、抱き合ったまま布団に横になった。なんという満足感と幸福感。温かくて柔らかな彼女の感触。心地よい疲れ。適度な高揚感。抱き寄せて優しく触れながら、初めて部室で彼女を抱き締めた日のことを思い出す。窓の外の空がどこまでも青かった。この満ち足りた時間が永遠に続けば良いのにと本気で思った。

「実は、触った事はあったんだよね。」
「は??」何の話だ?
「痴漢さんのを。。」
「。。。。」痴漢の、何?
「すごく気持ち悪かった。その場で気絶しそうなくらい。どうやって電車を降りたのか覚えてないんだ。気付いたら階段にいた。」
「。。。。」
あの時か。本当に、今思い出しても怒りと後悔で頭に血が上る。
「最初、ちょっと思い出しちゃって。。」
「そっか。」

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