坂道では自転車を降りて

「生駒さんとちょっと上手く行ってなくて。」山田は言った。
「上手く行ってないって、どんな感じなの?」
「最近、なんか、俺を目の敵にしてると言うか、何をやってもダメだしされて。部の雰囲気が悪くなっちゃってて。俺が降りろとか言うんですよ。でもそれも悔しいじゃないですか。」
「降りるって、穏やかじゃないな。役者が降りちゃったら、それっきりだ。俺が演出を降りたのとは訳が違うだろ。何、生駒さんとケンカしてるの?」
「ぶっちゃけ、そうなんですが。」
「部長のお前がケンカしてどうするんだよ。仲直りしないまでも、もうちょっと大人にできないの?」
「それはもう、あっちに言ってくださいよ。今日はまだ先輩がいたから、かなり大人しかったんですよ。」
「そうなんだ。」

 椎名の言う通り、原因は生駒さんか。確かに、山田はそんなことに私情を挟むようなタイプではない。割り切ってやれるはずだ。
「俺達、付き合ってたんですよ。ちょっとだけですけど。」
「はぁ?」
付き合ってたって、それも驚きだが、既に過去形?
「書き上がるちょっと前かな。あっちから告白って来て。」
「はぁ。それで?」
 書き上がる前って、5月か6月くらいか?俺、4月に生駒さんに告白られそこなった気がするんだが。
「夏休みくらいまでは、それなりに上手く行ってたんですけど。やっぱりちょっとついて行けない感じがあって。」
「あぁ。。」
彼女はいろいろ激しそうだからな。

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