坂道では自転車を降りて

「なんとなく、噛み合なくなってきたら、なんか彼女が部でも俺を目の敵にし始めて。」
「あー。。」なんとなく分かるが。
「俺、どうしたら良いんでしょう?」
「そんなの俺に相談されても。」
「なんか、女子って、わけ分からんと言うか、なんか、こう、どうしたら良いんだ!ってことありませんか?大野先輩は、あまりそういうのないのかな。」
「いや、多恵だってあるよ。しょっちゅうだよ。この前もちょっと叱ったら泣いちゃって。2人で2週間近くウジウジしてたよ。」
「で、どうしたんですか?」
「なんとか捕まえて、話して、最後は納得したと言うか、なんかいろいろ確かめ合ったと言うか。」
「よりを戻した訳ですね。」
「プライベートが修復できれば、劇に関して意見が合わなくても、それはそれで冷静にやれるだろ。ちゃんと、その、好きって伝えたのか?」

 どういうわけだか、山田に説教を垂れてるけど、考えてみたら、俺は「好き」ってちゃんと言っていただろうか?俺達が拗れ始めた夏休み始めのあの日、俺は彼女を部屋に呼んで、弄るだけ弄ったら何も言わずに帰してしまったような気がする。いや、弄る前には言った。それも君を大事にするとかなんとか。なのに、弄り倒したあげくに、やるだけやったら、抱き締めもせず帰らせた。多恵にしてみれば話が違うし、ヤリ逃げされた気分だっただろう。不実な男に心を奪われている自分を不安に思って、北村さんに相談すれば別れろと言われる。会いに行けば追い返される。混乱して当然だ。やばいなぁ、俺。山田に説教垂れてる場合じゃないや。

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