坂道では自転車を降りて
山田は俺が生駒さんに告白られそこなった事を知らないのか。知らないよな。多恵には、多少の敵愾心を持っていたように見えた。俺達が相談に乗ってもかえって話がややこしくなるような気がする。
「確認するけど、お前はもう別れるで良いんだな?それが原因で生駒さんが演劇部を辞めても後悔しないな。」
「後悔はしますよ。でももうこれ以上は俺も無理だし、彼女のためにもなりませんよ。」
「そもそも、なんで付き合い始めちゃったんだよ。」
「先輩達だって、付き合ってるじゃないですか。」
「俺も原に何度も止めとけって釘刺されたよ。上手く行かなくなったらどうするつもりだって。でも、結局、我慢できなかったんだ。俺が。」
「部長はやっぱり反対してたんだ。見てて、そんな気はしたけど。」
「そうだよ。本も演出も俺がやってたわけだし、部員を見て纏めたり、揉め事納めるのが部長の仕事だろ。お前ならできると思って原はお前を部長にしたんじゃないの?」
「そうか。そうですね。」
「それを、あんな難易度高そうな女子と。」
「先輩に言われたくありませんけどね。大野先輩だって十分難しそうですよ。」
「だから俺は部長じゃなかったんだろ。」
「ああ」
それにしても、困った事になったな。俺は頭を掻きむしった。こういうのは原の管轄だ。今ここに呼び出してやろうか。
「とりあえず、お前、役者は一旦降りろ。」