坂道では自転車を降りて
山田は驚いてムッとしたが、何も言わなかった。
「しばらく、部長だけやってろ。」
「わかりました。」
悔しそうな顔で、だが、同意した。
「公演はまだあるし、文化祭までだって、少しはある。生駒さんを外したほうが簡単なんだが、俺が彼女を説得できる気がしない。ここは一旦お前が引け。代役は?」
「え?」
「代役を用意してないのか?」
「・・・・」
「余ってる役者は?」
「男子は1年がひとり。でも最近、顔見せなくなっちゃいました。」
「とりあえず、そいつにやらせろ。」
「今からですか?1年ですよ。文化祭までに仕上がるかなぁ。。」
「やらせてみなきゃ分からんだろう。それに、誰か病気になったらどうする気だったんだよ。お前も部長なら声かけて、台詞くらいは覚えさせとけよ。」
「だって、去年も代役なんて用意してなかったじゃないですか。」
「アクシデントで役者が抜けたら、普通は演出が入るんだ。だから去年は男子の代役の心配はあまりなかったんだ。女子は役から漏れた役者はみんな小道具作りながら、台本全部覚えて、稽古見て動き覚えて、チャンスを狙ってたぞ。そうやって後輩のモチベーション維持させんのも先輩の仕事だろ。」
「。。。。」
「まあいい。俺もあまり意識してなかったから、クリスマスでは面倒な事になったんだ。自分が一年の時には全く別の方向に突っ走ってたしな。」