坂道では自転車を降りて
「俺がヘタレだと思ったら一瞬で醒めたって言った君は何所へ行ったんだ?君らしくないぞ。」
「だって。。。」
「君の脚本を認めたのは山田だけじゃない。春の公演の脚本を決めるとき、他の一年達もみんな君の本がやりたいって言ったじゃないか。だから、俺が脚本を書くハメになったんだろ。」
「。。。。。。」
「もっとみんなを信じろ。君は1人じゃないし、山田だけでもない。迷惑をかけるんじゃなくて、ちゃんと頼ってみろ。自分の弱いところを認めて、助けてもらうんだ。」
彼女はまだ納得できていない様子だったけど、なんとか頷いた。
「多分、君が思っているよりも、みんなは優しいし、君が魅力的だと知っている。君が城壁を高くしてるだけだと思う。」
「でも、上手くできないんです。素直に打ち解けられないんです。」
「本当にみんなと上手くやりたいと思ってるか?」
「どういう意味ですか?」
「それぞれの役者の演技を引きだして、纏めて舞台にするのが演出の仕事だよ。纏めるからには指示も出すし、責任だって重い。でも偉いわけじゃない。」
「べつに偉いなんて思ってません。」
「君は確かに優秀だし、やる気もあるし、加えてとても美人だよ。でも、本当はみんなだって君と同じくらい優秀なんだよ。君と上手くかみ合ってないだけで。」
「私が悪いって言うんですか?」
「もっとみんなを信じろって言ってるんだ。」
「やってるつもりです。分かりません。先輩の言ってる事。」