坂道では自転車を降りて
「君はいつも図書室で何をしているの?」
「いろいろ。」
「たとえば?」
「美術の本を眺めたり。気に入った絵を模写したり。本の挿絵も好きだし。」
「ふーん。」

言いながら、彼女の持っていたスケッチブックを手に取って開くと、彼女が恥ずかしそうな顔をした。
「いい?」
「良いけど、あんまり上手くないし、ラフスケッチとか描きかけばっかりだよ。」

 見れば確かにあまり完成度の高くない絵ばかりだった。前回の脚本に関連した絵や図面。美術書の模写のような絵もあれば、漫画みたいな落書き、友達を描いたラフスケッチ。清水先輩と思われる絵が何枚かあった。この男子は、鈴木先輩と川村か、他はあまり知らない子ばかりだった。

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