坂道では自転車を降りて
 スケッチブックは残り少なくなっていた。切り取ってしまう事が多いのか、リングに比べて紙が薄い。そういえば、脚本の絵を描いてくれた時も惜しげもなく切り取って渡してくれた。演出にブレが少なかったのはあの絵のおかげもあったかもしれない。これと言ってお礼をしていなかったが、スケッチブックを買ってやろうかとふと思いついた。迷惑かな。

「何??」
無意識に彼女を眺めていたらしい。慌てて視線を外す。
「いや、別に、なんでもない。これ、清水先輩だよな。」
「うん。先輩、綺麗だから、描いてて楽しい。」
ほんのりと頬を染めた笑顔がかわいいな。でも残念ながら俺に向けられた笑顔ではない。
「そうか。」
実は彼女もレズだったりして。いや、清水先輩がレズと決まった訳ではない。
< 81 / 874 >

この作品をシェア

pagetop