坂道では自転車を降りて
「終わったら帰って、ちゃんと勉強するからね。」
「おう。」
「がんばるから。見てて。」
「わかった。」
「ずっと傍にいて。ね。」
「急にどうしたの?それに、変なフラグ立てないでよ。」
「?何?フラグって?」
「小説とかで、そういう台詞が出ると、大抵、その後、離ればなれになったり、どっちかが死んだりするんだよ。」
「えっ。そんなつもりは。。」
「わかってるよ。冗談だって。そうだな。一緒に頑張ろうな。」
俺がそう言っても、彼女は少しの間、言葉を失って、茫然とした顔をしていたが、やがて笑顔になって頷いた。このとき感じた小さな違和感を、俺はおかしなフラグのせいにして、すぐに忘れてしまった。
「神井くん。」
「何?」
「進路が決まったら、しよう。」
何を?と言いかけて気付いた。
「お、おう。」
「私の初めての人になって。」
迷いのない表情。真っ直ぐ俺を見つめる瞳。凛とした声で言う彼女に、あらためて感心する。照れて誤摩化したり、言葉を濁したり、俺に言わせたりしない。自分の気持ちをストレートに告げようと頑張る姿は、女の子なのにカッコイイと思う。
「わわ、わかった。」
「ありがとう。」
言いながら、彼女は俺の目をみて頷いた。