坂道では自転車を降りて
 数日後、スケッチブックを片手に図書室へ向かう。彼女が使っているのと同じタイプのものが、駅前の本屋で簡単に見つかった。脚本に協力してくれた礼だといって手渡すと彼女は怪訝な顔をしたが、とくに遠慮はせず、ありがとうと言って嬉しそうに受け取った。

「でも、お礼をしなくちゃいけないのは私の方なのに。」
「なんで?」
「打ち上げの日も送ってもらったし、ずっと前だけど、保健室にもついて来てくれたよ。」
「そんなの。忘れてたよ。」

本当は忘れてなんかいないが、照れくさくてそういった。
「そう。。。」
彼女が少し残念そうな顔をしたので、あわててスケッチブックに話題を戻す。
「このスケッチブックはさ、また、本が書けたら読んで何か描いてもらいたいんだ。」
「あぁ、そういうことね。」
合点が行ったようで、笑いながら答える。
「うん。」
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