坂道では自転車を降りて
「俺が家にいないの分かってただろ。それに俺の留守に、勝手に部屋に入るなよ。」
「ごめんなさい。」
素直に謝るところを見ると、悪いとは思っているらしい。夏休みまでは家に上がるのも嫌がっていたのに。どうしたんだろう。それほど緊急事態だったということか。
「君の見ちゃいけないものがあるかもしれないだろ。」
「なあに?それ。例えばどんなものがあるの?」
「汚れた下着とか、臭い靴下とか、他にも、いろいろ。」
「いろいろね。笑。」
「そう、いろいろ。」
「まあいいや。で、今日はどうしたの?」
「ん。。もう大丈夫。神井くんのお布団で寝たらスッキリした。」
「そう。」
「温かくて、神井くんの匂いがして、気持ちよかった。」
俺の匂いね。以前にもそんなこと言ってたな。なんだか恥ずかしくて照れくさい。
「勉強して行くのか?」
「うん。そうする。」
「だったら俺もするかな。」
いつもなら食事まで少しダラダラする所だが、せっかくだから俺も勉強しよう。一旦キッチンに降りて、チョコレート菓子を失敬して、再び自室へ戻ると彼女は既にドリルにとりかかっていた。菓子を渡すと「さんきゅ」といって食べながらまた勉強しているので、俺も鞄を片付けて勉強し始めた。鞄の中の赤い包みを思い出して一人ニヤける。