坂道では自転車を降りて

 考えながら階段を降りると間の悪い事に母さんが廊下に出てきた。俺の顔をみて険しい表情になる。

「何かあったの?」
「別に。ちょっと出かけて来る。」
「大野さん帰るの?だったら母さんが車で送ってあげるわよ。」
「いや、いい。」
「今日はすごく冷えるし、みぞれ混じりで雨も冷たいから。」

 そういえば、外は雨が降っていたんだったっけ。でも俺達は走り出してしまった。

「いいよ。歩いて行くから。」
「ダメよ大事な身体なんだから。あんたは良くても、大野さんが風邪ひいたらどうするのよ。」
「大丈夫だよ。気をつけるから。」
「大野さん遠慮しないで、車で送ってあげるから。ちょっと待ってなさい。」
「うるさいな。いいって言ってるだろっ。」
「よくありません!」

ピシャリと言われて、一瞬、身体が竦んだ。彼女は怯えて俺の後ろに隠れてしまった。

「。。。なんだよ。」
「あんた、自分の顔、鏡で見てみなさい。大野さんも泣いてるじゃないの。あんた達、どうするつもりなの。どこに行くの。」

 どうするつもりって、そうするつもりだよ。彼女がして欲しいって言ったんだ。俺に、助けを求めてきたんだ。母さんに説明することじゃないだろ。いちいち聞くなよ。

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