坂道では自転車を降りて
生駒さん、すごいなぁ。
その後も彼女は"これで安心"というわけには行かなかったけど、俺達はなんとか綱から落ちずに綱渡りを続けた。彼女は少しずつ落ち着きを取り戻し、猛烈な勢いで遅れを取り戻し始めた。彼女の模試の結果は急上昇と急降下を繰り返して、ちっとも当てにならなくなり、荒海に飲まれた小舟のように進路の見えない日が続いたが、それもしだいに気にならなくなった。たとえ行く先が見えなかったとしても、自分のペースで進むだけだ。全ては自分の力になるのだから。
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12月の21日、2学期の終業式の日。俺達は並んで校舎の階段を上がっていた。昨日の放課後には演劇部のクリスマス公演が体育館舞台で上演された。今回は雑誌に載っていた脚本を使ったらしい。何年か前に他の高校の演劇部が作成上演し、コンクールで上位入賞した脚本だ。高校生らしい演出で若々しくも安定した舞台だった。
今、俺達が向かっているのは階段教室だ。今から演劇部のもう1つの舞台が上演される。脚本・演出・主演の全てが生駒さんの一人舞台だ。もちろん、舞台装置、照明、音響、そして衣装、振り付けなどの全てを演劇部がサポートし、例年と異なる上演時間、上演場所に関する告知、チラシ、ポスターにいたるまで、演劇部の活動の1つとして仲間が動いている。彼等はこの新しい試みに、一丸となって知恵を絞ったらしい。
クリスマスの定期公演は、ダンス部やブラスバンド部と合同開催の恒例行事だ。そのため、去年まではポスター以外の宣伝をしていなかった。単独公演となる今日の公演のために、脚本の一部を用いた放送用CMを作成し、昼休みに繰り返し放送してもらったり、新聞部の号外の隅に広告を載せたりと、様々な広告を展開しているのを俺達も見かけた。そのおかげか昨日の舞台の客入りも例年のクリスマス公演に比べてかなり多かった。