坂道では自転車を降りて

「受験ないのか。いいなぁ。それ。」
彼女が羨ましそうに言う。
「中学受験が良かったかと言われたら、俺は同意しかねるけどね。入ってからもいろいろ窮屈みたいだし。」
 君には無理なんじゃない?口には出さなかったが、そう言いたげな口ぶりだった。俺もそう思う。
「ふーん。」
 原の口ぶりには気付かなかったのか。気付いてあえて無視したのか。彼女はぼやけた返事をした。

 女子校に通う彼女はあまり想像がつかない。東さんと彼女が話したらどんな会話になるんだ?俺と東さん以上に噛み合ないのではないだろうか。

「そういえば、東さんと飯塚はどうなった?」
「山本さん情報だと1回デートしたらしいけど、その後は知らない。続きは来年なんじゃね。」
「そうか。だよな。」
 原は相変わらず情報通で、聞くと大抵の事は知っていた。

< 839 / 874 >

この作品をシェア

pagetop