坂道では自転車を降りて

ひとしきり世間話をしたあと、原が彼女に向かって切り出した。
「大野さんに前から一度聞きたかったんだけど、」
「?何?」
「神井のどこが良いの?」
唐突な質問に、彼女は口を開けたまま固まった。目をぱちくりさせている。

「さぁ。。?」
しばらくして間抜けな返事がこぼれでた。
「神井は?大野さんのどこがいいの?美波や生駒さんと何が違うの?」
「えぁ!おっ。そっ。」
「美波さん?」
「いや、美波は、違うだろ。」
「だったら、生駒さんは違わないってこと?」
「うっ。いやその。」

「大野さんはどうして神井とつきあってるの?椎名はまあいいとして、鈴木先輩や川村と神井は何が違うの?」
「そんなの分からないよ。好きだからとしか。」
「大野さんの好きって何?」
「好きって、、」
 原は一体何を企んでいるのか。こんな風に原が彼女と話すのは、初めてだと今聞いた。それにしては質問がきわどい。というか、これを聞くために彼女を誘ったのか。
 一方で彼女はいつもの彼女らしく真面目に答えるつもりらしい。少し戸惑いながらも真剣に考えている。

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