坂道では自転車を降りて

「すごく気持ちイイみたいだよ。」
「君はしてもらった事ないの?」
「小さい頃は好きじゃなかったかも。今は自分でする。お父さんは好きみたい。気持ち良さそうだよ。」

 なんだろう。父さんが母さんにしてもらって、気持ち良さそうで、子供の前でもやるようなこと。そして、英語の点が上がる。ベッドの上でする?
「縁側の日向でやるイメージがあるな。暗いとできないから。」
言いながら彼女はコンビニの小さなビニール袋を取り出した。ボールペン状の細長いものが入ってるように見える。なんだろう?

 答えを見つけられず困惑していると、彼女は俺の耳に口元を寄せて、息を吹きかけながら「見せて。」といった。何を?と思って身を引くと、彼女が俺の耳を引っ張って覗き込んだ。耳?
「あんまり汚れてないかな。」
!?。耳!耳掃除か!
「み、み、俺の耳、掃除してくれるの?君が?」
ひざまくら付き。。だよな。多分。脳が勝手な妄想を膨らませて、興奮で鼻の奥がジンとする。
「どう?やってみる?」
「え~ぁぃや。それは。。」
 正直やってみたい。なんか、気持ち良さそうだし。。でも、耳垢って汚くないかな。。それに長年連れ添った夫婦みたいなシチュエーションは、なんだかものすごく恥ずかしいような気がする。

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