坂道では自転車を降りて

 耳掃除が終わると、彼女はそろそろ帰ると言った。あまり長居して俺の調子が崩れるといけないとか言ってるけど、本気で言ってるのだろうか。確かにこれで調子が崩れたりはしないだろうし、とてもリラックスできたんだけど。これだけやっといてその言い分は、何か違うような気がする。

「じゃあ、がんばってね。」
「うん。来てくれて、ありがとう。」
「耳掃除、気持ちよかった?」
「気持ちいいっちゃあ、気持ちいいんだけど。」
「もうしない??」
「いや。。またやって、ほしい。かな。」
「よかった。」
 柔らかく笑う彼女がすごく可愛くて、やられっぱなしの自分がちょっと悔しくて、思わず手が出ていた。

 帰ろうと立ち上がった彼女の腕を掴まえて、ギュッと抱き締める。いつもならここで優しいキスをしてさよならだけど、今日はそれだけじゃ許してやらない。
 顎を掴んでキスを繰り返しながらどんどん深くしていく。何度目かのキスで彼女は音を上げて暴れだした。
 俺は彼女を逃がさないように抱き締めて、躯中を愛撫しながら、唇に耳に首筋に、蹂躙するようなキスで彼女を奪って行く。戸惑う彼女の抵抗が止んで、やがて恍惚とした表情になる。彼女の身体から力が抜けてしまって、腕がぷらんと落っこちて、彼女が立っていられなくなったところで、俺はやっと彼女を解放した。

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