坂道では自転車を降りて

 あれ?もしかして今日、しちゃっても良いのか?てか、今日するべきなのか?忘れていた訳ではないけれど、確認もしていない。彼女は覚えているだろうか。いや、あれだけはっきり約束したんだ。忘れている訳がない。
 俺が切り出すのを待っているのかな。それとも、分かっていて黙っているのだとしたら。。あれから半年近く経っている。彼女が今も同じ気持ちでいるとも限らない。
 無意識に彼女の顔をみる。彼女は少し頬を染めてはにかみながら、安心した様子で微笑んだ。俺の心臓がバクバクと演奏をはじめる。彼女が俺の手をギュッと握って身体を寄せてきた。気が変わったとは思えない。だったらこれは、了解の合図だろうか。

「ねぇ。」
「何?」
「八幡様と美術館。今度でも良い?」
「え。でもお礼参りは早い方が良いんじゃない?」
「そうだな。」
そうだよな。まだ午前中じゃないか。

「今日は何時まで大丈夫?」
「6時くらいって言ってきたけど。」
「そう。」
 門限は6時か。。

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