坂道では自転車を降りて
 GW明け、新入部員がほぼ固まった。まずは基礎練習に慣れてもらい、6月初めに一度、近所の幼稚園で子供向けの簡単な劇をする。これは既成の脚本を使うし、童話や民話をやるので、衣装もまあ揃ってる。客との距離も近いから発声や技術よりは熱意が伝わるし、反応も分かりやすい。子供は偉大な観客だ。楽しければ集中して見るし、楽しくなければ騒ぎ始める。一年生が人前で演じる事に慣れるにはちょうどいい。
 その後で、文化祭とコンクールに向けて本格的な活動が始まる。

 俺はそろそろ文化祭公演用の脚本を纏める時期となっていた。活動中に大野多恵に印刷したものを手渡すと、次の日の昼休み、彼女は図書室に現れた。やはり図書室は二人だけだった。
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