坂道では自転車を降りて

「あっ。メグ」
女友達を見つけたらしい。親しそうだな。
「ジョー。どうしたの？？」
ジョーって大野さんががジョー？？あしたのジョー？
「ちょっと、田崎くんの顔を確認に。」
「だったら、呼んであげる。あたし、仲いいの。田崎クーン。」
「違うの、呼ばなくていいの。待て。こら。」
赤い顔で制止する彼女を無視して、メグこと北村さんは田崎を呼び出した。俺を無視して、何やら変なやりとりが始まっている。

「俺、もう行って良いかな。」
「あ、ごめん。ありがとう。」
　田崎の顔を知ってどうするつもりなんだろう。しばらくして教室に戻ると、彼女と田崎が北村さんを挟んで、やたら赤い顔で話をしていた。まるでお見合いのようだ。何だったんだろう？ラブレターでも貰ったんだろうか。

　何日かすると、彼女は田崎とすっかり仲良くなったらしい。北村さんや秋川を交えて、５組の廊下で話しているのを見かけた。表情豊かに笑いながら話す華やかな北村さんに比べて、落ち着いて話す彼女はあまり目立たない。彼女と北村さんはあらゆる点で正反対だった。

　派手な顔立ちで社交的、華やかという言葉がぴったりだが、ともすれば遊び人にも見える北村さんに比べて、彼女は大人しくおっとりした印象だ。人付き合いが苦手そうで、晩生で、悪く言えば地味だ。仲がいいというのが、なんだか不思議な感じだ。
　俺を見かけると彼女は屈託のない笑顔で笑いかけてきた。こちらも笑顔を返す。どんな話をしているんだろう。