幸せの行方
帰国

✡✡祖父と千佳


私は、父と兄より
一足先に帰国した。
たった半年だが、
久しぶりの感覚だった。

直ぐに、祖父の病院へ
病室にはいると
昔の威厳もない祖父が寝ていた。
祖母は、私の顔を見ると
「わざわざ、ごめんね。」
と、言った。

それから
主治医の先生の話を改めて、
祖母と二人で聞いた。

祖父は体中に癌が
転移しているそうだ。

話が終わり祖父の病室に戻ると
目が覚めた祖父は、私を見て
目を細めて笑った。

そんな祖父にびっくりするが
「千佳です、わかりますか?」
と、言うと。

祖父は、コクンと頷いた。

私が祖父の手を握ると。
祖父も、握り返してくれたが、
その力は、酷く弱く儚かった。

私は、
「小さい時から、私を育ててくれたのに、
歩みよろうともしないで
殻にとじ込もって、ごめんなさい。
おじいさんのおかげで、
会社の同期や下宿のお兄さん達
かけがえのない人達に
出会うことができました。
ありがとうございます。」
と、言うと。

祖父の目から、涙が流れた。

話してみれば、良かった。
早くに‥‥‥後悔をしたが
今日、話せて良かった。


まるで・・
·····私の帰りを····
待っていた·····かのように······
その夜‥‥
·······祖父は······息を·····引き取った‥‥。

父と兄も、直ぐに帰国した。
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