【完】恋の授業を始めます。
賢人君は手慣れた手つきで、料理をする。
すごい上手。
包丁の切るスピードとか早いし。何かプロみたい。
「・・・今宵。」
賢人君が恥ずかしそうな顔で私を見る。
「そんなガン見されたら、料理しづらい。」
「ご、ごめん!あまりにもかっこよくて、つい。」
はぁ、私も料理出来れば良かったんだけどなぁ。
「そう。」
なんかさっきより更に顔赤くなってない?
隣では、お母さんさんがニヤニヤしながら私達を見ている。
「ラブラブねぇ。夫婦みたい。」
ふ、夫婦・・・。
なんか、私まで恥ずかしくなって来ちゃった。
さっきのあれを思い出したから。
『じゃあ予約しとかなきゃな。』
さっきのことが頭の中に流れてくる。
「どうしたの?二人して黙り込んで。」
「何でもねぇ。」
手を止めてた賢人君も再び料理にとりかかった。
さっきのことは、お母さんには内緒にしとこう。
しばらくすると、料理がテーブルに運ばれて来た。
「すごい、美味しそう。」
飾り付けも良く、まるで高級レストランにでも来たかのようだった。
「大袈裟だよ。じゃあ食うか。」
私達は「いただきます。」と言って、料理を食べた。
「美味しいー!」
美味しすぎて、思わず声を出してしまった。
「でしょ?賢人の作る料理は、世界一なのよ!」
「母さん、大袈裟。」
私が知らなかったことがまた一つ新しいことが増えて、何だか嬉しくなるな。
「賢人君の御家族って、あと誰かいるの?」
「あぁ。親父と中学生の弟がいる。あとは北海道で暮らしてる爺ちゃんと婆ちゃんかな?」
家族いっぱいって良いな。
すると、お母さんがティッシュで賢人君の頬を拭いた。
「賢人、タレ付いてるわよ。」
「ちょっ、いいよ!自分でやるから。」
そのやりとりに少し笑う反面、羨ましいと思ってしまう。
私にもお母さんがいたら、こんな感じなのかな?
そう考えてる時に、賢人君が私を見ていたことなんて、知りもせずに。