烏藍婆那
「八郎は……ひぃばーちゃんのこと、好きだったの?」

 悲しげな顔のまま、八郎はこくりと頷いた。

「でもひぃばーちゃんは、八郎のお兄ちゃんのお嫁さんなのね?」

 またも、八郎は頷く。

「なのにおばーちゃんは、八郎の子かもしれないの?」

 ちょっと躊躇った末、八郎はまたも、こっくりと頷いた。

「こんの下衆が! 何兄嫁を寝取ってるんじゃあ!」

 私の裏拳が、綺麗に八郎の頬にヒットした。

「何そんな悲しげな顔してんの! あんた、自分が何やったかわかってんのか! 泣きたいのはひぃじーちゃんのほうだっての! イケメンだからって何してもいいわけじゃないんだからね!!」

 立ち上がったついでに、げしげしと八郎を蹴り倒す。
 驚いた顔のまま、八郎は私の足の下で転がり回った。

「弟に嫁を寝取られたひぃじーちゃんの気持ちを考えろ! いくら病気だからってね! そんなことは、人道に外れたことなんだよ!!」

 見たところ、八郎には傷がない。
 死んだ後も傷が残るのかはわからないけど、何となく死んだときのままの姿で出てくるイメージだ。

 だったら斬り死にではないんじゃないか。
 この綺麗さからいうと、病気で死んだのだろうと勝手に決めつけて、容赦なく八郎を蹴り倒す。
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