甘い恋の賞味期限
 あくまでも、千世の推測でしかない。確信も何もないが、気になったらつい聞いてしまうのだ。口の締まりが悪いのは、自覚しているけど。

「そんなこと、あなたに関係ないですよね? 無事だったんだから」

「確かに関係ないですけど……。無事だったとしても、父親は知る必要があると思いませんか?」

 これを、俗にお節介と言うのだ。
 千紘は生意気だし礼儀を知らないようだけど、まだ小さい子どもだ。
 そんな千紘のことを思えば、言わずにはいられない。

「ちゃんと旦那様には伝えますから」

「…………行っちゃった」

 後味が悪くて、スッキリしない。

「関係ない、か」

 静子はハッキリと、そう言った。反論しなかったのは、自分でも理解しているから。
 千紘は【また】と言ったが、本当に2度目があるとは限らない。人の縁なんて、そんなもの。一緒に居た時間は2時間程度。
 【また】が来る可能性よりも、来ない可能性の方が高い。
 これ以上マンションの前に居るのも、時間のムダ。

「帰って手伝わないと」

 折角の休みを、両親の手伝いに費やすなんて。

「私って孝行娘よね」

 千世は来た道を戻る。今度はひとりで。




*****

 史朗が自宅マンションへ帰って来たのは、21時過ぎ。今夜は早い方だ。
 いつもはもっと遅い。

「お帰りなさい」

「……千紘はまだ起きてるんですか?」

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